すみれ亭句会足利記念吟行句会
10月5日(月)足利行道山
「山道を登る」
「モノレールで淨因寺まで」
今年の『すみれ亭句会』の記念吟行句会は栃木県の足利となっ
た。足利は皆さんご存知の『足利学校』のある下野の地である。
今回の句会は特に『行道山淨因寺』といって、市の北方山中に
あるお寺である。境内の中腹までは杉木立の林立する幽玄の世
界である。まだ紅葉には早かったが、セミの鳴き声も聞も時た
ま聞こえるといった時候であった。
「淨因寺鐘楼」
このお寺の歴史は古く何と行基上人によって和銅6年に開創さ
れたというから、1300年も前ということになる。元々この
寺は、僧侶たちが学問・修行をする寺であったので、「関東の高
野山」といわれてきたという。
「清心亭を望む」
明治に入ってから一般の寺になり、現在は臨済宗妙心寺派に属
している。檀家さんの話によると、これまで何度か火災に遭っ
たということで、残念ながら本堂の建物やその歴史を伝える資
料等も焼失してしまったという。山頂近くには寝釈迦の像が残
っているが、幾分苔むした石像を見ても歴史の古さを感じさせ
る。ただ、あまりの小ささに、これを見たどなたかが「赤子の
ような・・・」と詠んだのも肯ける。
「清心亭の前で」
さて、今日の句会の場所は『清心亭』という茶室である。この
写真でもお分かりのように、崖の上に中空に飛び出るがごとく
に建てられている茶室である。事実、建物の一部は宙に突き出
ているのである。
「北斎の“雲のかけはし”」
そこへは『天高橋』という、崖と崖の間に架けられた橋を渡ら
ねばならない。この光景を葛飾北斎が描いている。かれも感動
したのであろう。茶室からの眺望はまた格別である。遠くは筑
波山を見ることができた。間近には足利の山並が迫り、その間
に足利の街なみも見ることができた。
「お茶会の席で①」
前置きはこのぐらいにして、句会へ移ろう。
句会に先立って、こんな風情のある場所で句会を催すであるか
ら、『お茶会』も持とう、ということになった。たまたま、河
童の義姉和子さんが進んでお点前をやってくれることになった
ので、久しぶりでその味を堪能することができた。土地の練り
菓子に加えて、松本開運堂のお干菓子までご馳走になった。お
薄も美味しくお代わりをする人も多くいた。天空の茶室でのお
点前は格別であった。
「寝釈迦」
「足利の街を臨み」
「下山はおれにつかまって」
「ちょっと一服」
さあ、気持ちも落ち着いたので句会であるが、その前に、『寝釈
迦』を見に行こう。境内の裏手の山を登ることおおよそ20分。
僅かの距離だが何分にも山道だから結構きつい。さあ、全員これ
を登り切れるか、大いに心配したのだが後期高齢者のレッテルな
ど返上。全員登頂できたのだ。ここの写真をご覧あれ!14人全
員が写っています。これもお釈迦様の温かいご支援があったれば
こそか! 寝釈迦といえば、タイ等で見る大きな像を想像しがち
であるが、目の前に見る『寝釈迦』の小さいこと。まるで赤ちゃ
んの如き大きさである。これには皆驚いた。まさに「赤子のよう
な」である。でも、苔むした小さな石像を見るとその古さが感じ
られた。きっと、千年の歴史を持っているのであろう。
「お茶会の席で②」
昼食後、早速『清心亭』に戻り句会が開始された。特に兼題はな
いがこの吟行に相応しい句ができるとよいのだが。そこはわが会
員。行道山へ入ってから僅かの時間に驚くべき観察眼である。こ
こに見るように素晴らしい句ができあがった。
「句会」
特に、最高得点(6票)の
『山巓のさやかに寝釈迦まどろめり』(まさ)
次点(5票)の、
『千年の秋かき分けて釈迦涅槃』(黄雀)
は秀逸であった。
「孔子賞・まささん」
「尊氏賞・黄雀さん」
「かえで賞・和代さん」
「かもしか賞・慶さん」
「記念写真」
「下山」
今日は参加者全員に賞が用意されていた。その賞の名称がこの土
地に因んだ印象に残るものであったので、いくつかご紹介してみ
よう。『孔子賞』(『旅の流儀』)『足利尊氏賞』(『悪の力』)『足利
学校賞』(『戦争と検閲』)『とちおとめ賞』(『小林一茶』)『とち
のき賞』(『仰臥漫録』)『おおるり賞』(『中勘助詩集』)等。賞品
の「旅の流儀」からはじまって「中勘助詩集」への緒書籍の選
択は倦鳥先生ご苦心の作であった。
「孔子廟」
「方丈の間」
「足利学校にて」
「鑁阿寺二重の塔の前で」
句会も時間通りに終了して、名残惜しい行道山を下りたが、せっ
かく足利に来たのだから『足利学校』『鑁阿寺』も見ようと、釣
瓶落としの秋の夕暮れ迫るなかを街へ急いだ。何とか、『足利学
校』も間に合い方丈の間等にも入ることができた。鑁阿寺も最
近国宝に指定された本堂をはじめとして、二重塔、宝物館等も
見ることができた。全ての行事を無事終えて東武線の駅に着く
頃は、既に夕靄が立ち込めていた
今回の句会に当たっては、地元の檀家堀江様、市役所の方、義姉
早川和子さんには一方ならぬお世話になったことを付記しておく。
また、幹事役のらうらさん、晶子さん前日からご苦労様でした。
文責:諏訪河童
写真:諏訪河童